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藤巻幸夫 藤巻幸夫 代表取締役社長

伊勢丹時代に「解放区」「リ・スタイル」「BPQC」を立ち上げ、
カリスマバイヤーとして脚光をあびた藤巻幸夫さんは、
バッグメーカーの専務取締役などを経て、
昨年、靴下・下着メーカー福助の代表取締役社長に就任。
老舗ブランドの再建に乗りだした藤巻さんに、
ヒットを生む秘訣を伺いました。

まずは、伊勢丹時代に
どのようにしてヒットを生みだしてこられたのか、
お教えいただけますか?


大事にしている言葉の中に「スタイル」というのがあるんですよ。
伊勢丹の研修で、ニューヨークのバーニーズに行ったときに、
現地のバイヤーは、自分の好き嫌いで商品を選択していることが
はっきりわかったんですね。
向こうの人は、自分なりのスタイルを持っていて、
他人の評価ではなく、自分の感覚でイケると感じたものを買いつけ、
一度決めたらそれを3シーズンくらい買いつづけて
プロモーションしていく。
商品を売るというよりも、自分なりにいろんな要素をミックスして
独自の世界観をつくりだし、顧客を魅了していくわけです。
ひとつのスタイルやブランドというものは、
そういう継続の中から生まれるもの、
育成していくものだということを、
その時、目の当たりにしたわけです。
それで帰国後に、
「伊勢丹が持っている土地を、どのような場にしていけば、
お客さんを魅了できるか」ということを考え、
ガレージを使って「解放区」のショーを開いた。
一人のデザイナーの作品をコーディネートして見せるのではなく、
いろんなデザイナーの作品を一人のモデルにミックスして着せて
ショーを開いたら、お客さんが喜んでくれたわけですよ。
そういうことを瞬間に感じて、それを実行できるかどうかが
大切なんじゃないかと思っています。
藤巻幸夫 大胆な企画を立てていく中で、
「出る杭は打たれる」というようなことはなかったのでしょうか?


僕ね、向こう見ずなんで、
途中から中間にいる上司を飛び越えて
理解を示してくれそうな権限のある人に、
直接、交渉に行ったりしました。
だから、成績悪かったですよ。
係長になったのも、70何人いた同期の中で、70何番目でしたから。
だけど、これはぜったいにお客さんに喜んでもらえる、
面白がってもらえるという信念だけは持っていた。
僕は、お客さんのために仕事をやっているんであって、
上司のためにやっているんじゃないって・・・。
でも、上司を納得させるには、
プレゼンテーションをしなくてはいけない時もあるわけです。
そういう時は、ペテンをかけてましたね。
ある時、「偉くなる」っていう言葉に
大人は弱いんじゃないかって感じて、
「これをやったら成功できますよ」「マスコミに出ますよ」
「有名になれますよ」って説得すると、
簡単に「そうか」ってなるわけですよ。
詐欺はやっちゃいけないけど、
結果的に人を幸せにするこういう嘘は、イイと思うんですよ。
藤巻幸夫 これをやれば間違いなく当たるという、
藤巻さんのその確信はどこからくるんでしょうか?


やっぱりね、市場を歩くことじゃないですか。
生活者としての自分を大事にするってことですかね。
たとえば、若い頃に比べてお金をもらっていようが、
僕はまったく生活を変えていないんですよ。
吉野家にも牛丼が最後の日に食べに行ったし、
ラーメンもいろんなお店に食べに行っている。
「このラーメンだったら500円以上は出したくない。
この素材のカーディガンが26000円というのはちょっと高いな」と
感じるその実感をすごく大切にしている。
これだったら、買える、買えない、
いくらなら出すけど、これ以上は出したくないという
その微妙な違いを、わかりえるかどうかが重要だと思うんですよ。
自分で言うのはおこがましいですけど、
この20年間、誰よりも街を歩きまわってますよ。
毎週日曜日は、気になった場所を4時間くらい歩いてますから。
銀座とか代官山という場所だけでなく、
かっぱ橋を歩いたりもしている。
僕は毎日、自信がないんですよ。
だから、自信を持てるように毎日行動している。
そうすることによって、
「この靴下の値段が800円は高すぎる、
これが600円は安いんじゃないの」と
デザイナーに自信を持って言えるわけです。
だから、社長とか言うんじゃなくて、
会社の中で一番ショッピングができる人間でありたいと
常々思っているんですよ。
もし、デザイナーのような才能が僕にあったら、
今の自分はなかったような気がします。
藤巻幸夫 藤巻さんは、企業の再建という大変なお仕事を
お引き受けになられたわけですが、
かなりお悩みになられた末の決断だったのでしょうか?


悩まなかったですね。
やりがいがありそうだとか、面白そうだとか、
そういう思いのほうが強かったですね。
日本の伝統的なブランドに関わりたかったという思いも強かったし、
まさに飛んで火にいる福助だったわけです。
「会社の再建なんてキツい。百貨店の人間でアパレルをやって
通用した人間なんて一人もいない」とか散々言われましたが、
そういうことを言われるほど、燃えるわけですよ。
人間は困難に立ち向かうことで強くなれる、
失うものよりも得られるもののほうが大きいと、
僕は信じてるんです。
だから、無駄なことも好きだし、余計なことも好きだし、
馬鹿じゃないのって言われることも大好きなんです。
まあ、これまでに観た映画がそういうのが
多すぎたせいかもしれませんが、
人生ってそういうもんじゃないのかなと、思うんですよ。
みんなに笑われるんですけど、ほんとに「寅さん」が好きで、
あのオジサンが、ひとつのブランドじゃないですか。
あっちこっちのいい旅館でメシ食って、恋して、
あんな生活ほんとにいいなと思いません?
あれこそ、最高のクリエイターじゃないですか。
まあ、この先、大変なこともいろいろあると思うんですけど、
成功するまでやればいいと思うんですよ。
大変なことをあえて引き受けたんだから、
大変なのは当たりまえのこと。
だから、明るくやりたいですね。
というか、単純にネアカなんですよ。(笑)