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鳥越俊太郎(ニュースの職人)辻口博啓(パティシエ)藤巻幸夫(福助代表取締役社長)宮田秀明(東京大学大学院教授)ニコライ・バーグマン(フラワーデザイナー)前田知洋(東クロースアップマジシャン)金原瑞人(法政大学社会学部教授・翻訳家)矢沢大輔(ブランディング&ビジネスコーチ)
辻口博啓 辻口博啓 パティシエ

パティシエの辻口博啓さんは、フランスの
「クープ・ド・モンド」をはじめ、
洋菓子の世界大会で4度優勝。
辻口さんがオーナーシェフをつとめる
東京・自由が丘のパティスリー「モンサンクレール」、
「自由が丘ロール屋」、
六本木ヒルズにあるショコラ専門店
「ル ショコラ ドゥ アッシュ」は、
連日行列ができる盛況ぶりです。
自分が思い描いた夢を着実に実現させ、
今後は「スイーツの世界で、パリコレクション、
ニューヨークコレクションを開きたい」と語る辻口さんに
お話を伺っていきます。

辻口さんは、ご自身のレシピを著書で詳しく紹介されていますが、
同業者においしさの秘密を盗まれ、
困るようなことはないのでしょうか?


僕は、生きている間にいろんな発想をしたいという思いがあって、
そもそもレシピ帖を持たないんですね。
その時々でおいしいと感じるものを、
常に自分の味の基本にしておきたいんです。
たとえば、レシピ通りに仕事をしている人たちは、
何かの事情でイチゴが入らなくなると困りますが、
僕の場合、旬の素材がなくなったら、
また違う素材を探せばいいと思っているので困らない。
フランス菓子をやっているから、
フランスの素材を使わなくてはいけないとも思わないし、
その時期においしいジャガイモや大根が採れれば、
それもお菓子に使えると思っているわけです。
ですから、レシピよりも常に自分の舌を信じて仕事をしています。
自分のレシピを隠さず、すべてを公表することで、
再びニュートラルな自分に戻れ、
そこから新たなものを開拓していく気持ちがまた生まれてくる。
それが自分の限界を超えていくことにもつながると思うんです。
辻口博啓 パティシエの世界的なコンクールで4度優勝されていますが、
何か特別な才能をお感じになっていらっしゃいますか?


才能は、たぶん関係ないと思いますね。
僕は石川県の和菓子屋で生まれて、
小学生のときに初めて食べたショートケーキに衝撃を受け、
洋菓子をやろうと決めた。
高校を卒業して、東京に出てきたときは、
なんのコネクションもなく、飛び入りでお店で働かせてもらい、
そこで先輩の仕事を目で盗みながら仕事を覚えていった。
働いているうちに、屋台でロールケーキをやろうという
アイデアが浮かんでも、資金力がなくてできなかったんです。
それで、まず本場のフランスで優勝するということに
自分の目標を移していったわけです。
僕は、思ったことを実現するには、
才能よりも、モチベーションを維持する力を
持てるかどうかの方が大切だと思うんです。
世の中には夢をあきらめる人もいるけれど、
僕はあきらめるということは、無意味だと思う。
へんな話ですが、フランスのコンクールで優勝するまで、
世界の頂点にいる人物の写真を枕元において、
10年以上寝起きしてましたね。
寝る前に写真を見ながら、
自分とどこがどう違うのかということを事細かに観察したり、
写真では読みとれない味覚を想像したりしていました。
結局、日本のレベルに焦点を合わせて、
日本一になろうと思っていてもなれないわけですよ。
世界を見なければ、日本一にはなれない。
世界中の情報をかき集めて、
どこで誰が何をやっているのかと見ているうちに、
自然と日本一になり、世界の道が見えはじめてきた。
そして世界の人々とコンタクトしているうちに出てきたのが、
「やっぱり僕は日本人だ」という答えだったんです。
僕はフランス人になれないし、アメリカ人にもなれない。
日本人が培ってきた文化の中に僕の武器が隠されている。
そういうことを感じたときに、日本人であることの喜び、
日本人であることのすばらしさに気づいて、
それから世界を狙えるレベルになってきました。
辻口博啓 辻口さんは、フランスでの修業経験もお持ちですが、
日本にいるのと比べて、何か大きな違いはありましたか?


長くフランスにいたわけではないのですが、
南仏にあるパティスリーでお世話になっていました。
同じ職場にいたのはフランス人ばかりで、
ある日、こんなことがあったんです。
店のトップが、厨房に入ってきて、
「この掃除は誰がやったんだ、汚い!」って叫ぶと、
さっきまで掃除をしていた人間が「辻口がやった」と言って、
僕が怒られるわけですよ。
でも、そこで引きさがっていたら負けを認めることになるから、
そのフランス人を店の隅っこに呼び出してボコボコにしちゃった。
もう口で言っても通用しないんだもん。(笑)
ある意味、彼らに認められるには、
そういう腕力勝負のようなことも必要だと肌で感じましたね。
俺にもいつかチャンスがまわってくるだろうと、
洗い物ばかりやっていたら、
それこそアイツには洗い物だけやらしとけとなっちゃう。
仕事を黙々とやっている姿を見て、
「勤勉で素晴らしい」とは思ってくれないわけです。
かといって、主張したことができなければ、まったく評価されない。
言ったことをちゃんとできる人間が評価され、上にあがれる。
これから日本の社会も、どんどんそういう厳しい時代に
なっていくんじゃないでしょうか。
辻口博啓 最後に、辻口さんのパティシエとしての
これからの夢をお聞かせください。


食の仕事というのは、
画家のように死んでから価値が評価されることはなくて、
生きていて自分で作りださなければ価値を生みだせない。
だから、いまやらなければ意味がないし、
そのためには自分がやりたいと思うことを常にやっていたい。
逆に言えば、やりたくないことをやる必要はないということですね。
それが自分の健康管理にもつながるわけですから・・・。
それから、「食」の世界で、いつかパリコレクション、
ニューヨークコレクションをやってみたいと思っています。
これまで世界的なコンクールで4回チャンピオンになりましたが、
パリやニューヨークに住む一般の人々の多くは、
僕の味をまだ知らないんです。
審査員や同じ業界の人は知っていても、
一般の人は僕のスイーツをまだ食べたことがない。
だから、僕の世界観を表現するスイーツコレクションを、
いつかニューヨークやパリでやってみたいと思っています。